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  • 雲のでき方とエアコンの深い関係?  【修正版】


    前回説明した“雲の正体とでき方”でも“フェーン現象の計算問題”でも、「空気が上昇すると温度が下がる」ことについて触れましたが、まだその理由について説明をしていませんでしたので、今回はそれについて説明をしましょう。


    皆さんの中には、高空を飛ぶ飛行機の中ではスナック菓子の密封された袋がパンパンにふくれ上がることを知っている人もいるでしょう。これは、上空にいくほど気圧(大気圧)が下がって袋の中の空気を押し縮める力が弱くなることが原因です。上昇していく空気もこれと同様で、気圧の低い上空では体積が急速に増えます((ぼう)張)。しかも、膨張した空気の温度は低くなるのです。このように、気体が膨張して温度が下がる変化のことを、難しい言葉で“断熱膨張”といいます。“断熱”というのは、「とても熱を伝えにくい空気は、短時間にまわりの空気と熱のやり取り(移動)ができない」という意味です。


    断熱膨張

    それでは右の図を見ながら、断熱膨張によって空気の温度が下がる原理を簡単に説明してみましょう。いま、体積が1Lの空気がEの熱を持っているとします。この空気が勢いよく上昇していくと、気圧が下がるにつれて体積が2L,3L,……と増加していきます。しかし、空気の体積が増加してもまわりと熱のやり取りをしないので、空気全体が持っている熱は常にEのままです。そのため、空気1Lあたりが持っている熱はE→B→Aと減っていくことになります。つまり、空気が膨張するほど空気の温度が下がるわけです。水蒸気を含んだ空気の温度が下がって露点に達すると、空気中に水蒸気が含めなくなり(飽和)、水滴となって出てきます。これが雲のできるしくみです。


    ところで、この図を逆に考えてみましょう。1LあたりAの熱を持つ冷たい空気が3Lあるとします。この空気をギュッと押し縮めて1Lにすると、1LあたりEの熱を持つ高温の空気になります。このような変化を“断熱圧縮”といいます。例えば、自転車のタイヤに空気を入れるときに空気入れの筒の部分が手で触れなくなるほど熱くなったり、フェーン現象で山をこえた空気が平地へ降りてくるときに温度が上がったりするのは、どちらも断熱圧縮が原因です。


    実は、このような“断熱膨張”や“断熱圧縮”がエアコンで空気が冷えたりあたたまったりする原理なのです。そこで、ここからは中学入試に出題されることもあるエアコンのしくみについて説明しましょう。


    エアコンは室内機と室外機の2つで1セットになったもので、この2つは“冷(ばい)”の流れるパイプでつながれています。冷媒は熱を運ぶ物質で、5℃くらいの低い温度で液体から気体になる性質をもった物質です。(昔はこの冷媒にフロンが使われていました。)

    また、部屋の中にある室内機と屋外に置かれた室外機の中には、どちらも「熱交換器」が入っています。熱交換器はうすいアルミ板でできていて、その面積はたたみ7枚分にもなるのです。もし熱交換器のしくみをもっとよく見たければ、お家の人に頼んで自動車のラジエターを見せてもらうとよいでしょう。(どちらもまったく同じものです。)

    それでは、次の図を見ながら、エアコンで部屋の温度を下げるしくみを説明しましょう。


    エアコンのしくみ

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    まず、室内機に注目しましょう。約5℃に冷えた液体の冷媒が流れる室内機の熱交換器に室内の空気を流すと、室内機の吹き出し口から冷たい風が出てきます。熱交換器の中で冷たい冷媒が室内にある高温の空気から熱を吸収するのです。このとき、熱交換器の中では液体の冷媒が蒸発して気体になります。これは、注射の前にアルコールをぬると冷たく感じたり道路に水をまくと涼しく感じるのと同じ原理です。液体が気体になるときにうばう気化熱によって温度が下がるのです。

    約10℃にまで温度の上がった冷媒は、パイプを通って室外機の中にある圧縮機(コンプレッサー)で圧縮されます。圧縮機はモーターのはたらきによって冷媒を押し縮めるはたらきをするものです。押し縮められた冷媒の温度は断熱圧縮によって約80℃にもなって室外機の中の熱交換器へ流れこみます。真夏の外気温がいくら高くても、これだけ冷媒の温度が高ければ、冷媒の熱は容易に外気に伝わって冷えることがわかってもらえるでしょう。

    こうして外気によって冷やされた冷媒の温度は約45℃にまで下がり、再び液体にもどります。そして、この液体の冷媒が膨張弁を通るときに圧力が一気に下がることで“断熱膨張”が起こり、約5℃に冷えた液体の冷媒となって、再び室内機へと送られるのです。


    以上が、エアコンのしくみの簡単な解説です。最初に説明したように、エアコンは冷媒の体積を変化させることで、まるでポンプのように室内の熱(ヒート)を室外へくみ出すのです。このようなはたらきを『ヒートポンプ』といいます。

    ここで注目してほしいのは、エアコンは冷媒と空気に“温度差”を生じさせることによって熱を移動させるので、熱の移動には一切エネルギーを使わないということです。エアコンが大きな電気を使うのは、圧縮機のモーターを回すときだけです。エアコンは大きな電気を使うことで知られていますが、5年ほど前から作られている最新型のエアコンは、圧縮機を動かすのに使う電気エネルギーの6倍近い熱エネルギーをくみ出すことができる点で、実は非常に効率の高い機械なのです。そして、そのカギとなるものが“断熱膨張”と“断熱圧縮”というわけです。


    それでは、ここで1つ問題です。


     問い エアコンを使うとき、同じ設定温度でも電気代を減らすためにはどんな

       ことをすればいいでしょうか。エアコンのしくみをヒントに答えなさい。


    (答えは最後に示します。)



    さて、家庭にある冷蔵庫もそのしくみはエアコンとまったく同じで、室内機と室外機が1つにまとまっているだけです。ただし、室外機の熱交換器にあたるものが冷蔵庫の側面・上面・裏面に分散配置されているので、冷蔵庫を壁にぴったりとくっつけて置くと、庫内からくみ出した熱が逃がせなくなります。また、冷蔵庫をひんぱんに開閉するのもいけません。どちらの場合も冷蔵庫の圧縮機が回りっ放しになって電気代が多くかかりますし、何よりとてもこわれやすくなるということを覚えておきましょう。



    ところで、家庭にあるエアコンは、夏は冷房に使えますし、冬には暖房に使えます。まったく逆のことが、どうすれば1台の機械でできるのでしょうか。

    それは、エアコンの圧縮機に流す冷媒の向きを、冷房のときと逆にすればいいのです。もう一度、上の図を見て下さい。まず圧縮機で押し縮められて高温になった冷媒ガスを室内機に送りこみ、冷えた室内を暖めます。温度が下がった冷媒ガスを膨張弁に通すと、断熱膨張によって冷媒の温度が一気に下がります。すると、“真冬の冷たい外気”の方が“低温の液体の冷媒”よりも温度が高いので、真冬の冷たい外気から熱を取り出すことができるのです。これを再び圧縮機で押し縮めれば、外気からくみ出した熱で室内の冷えた空気を温めることができるようになるというわけです。


    このように、ヒートポンプはいろいろなところで使われています。例えば、洗たく機の乾燥には、ヒートポンプで温めた温風が使われます。最新の洗たく機は、わずか40円ほどの電気代で洗濯から乾燥までをこなすそうです。

    皆さんは『エコキュート』という機械を知っているかもしれません。これは、空気の熱を使って冷たい水をあたためてお湯を作る機械のことです。細かい点では異なりますが、エアコンを暖房で使うときと同じ原理ではたらいています。ヒートポンプによって空気中の熱を効率よく取り出して水を温めることで、お風呂のお湯や床暖房に使うお湯を作ることができるのです。この機械の素晴らしい点はものすごく効率がよいことで、最新のエコキュートの中には、機械を動かすために使う電気エネルギーの6倍もの熱エネルギーを取り出すことができるものもあるんだそうです。


    このような高度に発達した環境技術は日本のお家芸です。こういう話に興味を持った皆さんの中から、未来の地球を救うアイデアを発明してくれる素晴らしい人がきっと現れることを願っています。



    【設問の答え】

    答えは「室外機のまわりに水をまく」です。

    エアコンは室内からくみ出した熱を室外機の熱交換器で外へ捨てます。このとき、温度差が大きいほど多くの熱を捨てられるので、室外機のまわりに打ち水をして、室外機のまわりの温度を少しでも下げてやるだけでエアコンの負担は下がるので電気代が節約できるというわけです。ただし、まくのはお風呂の残り湯などの“捨てる水”にしないと、水道代の方が高くなりますよ(^_^;



     

     

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