• ホーム
  • 理科の勉強方法
  • 理科の豆知識
  • 計算問題 〜解法の奥義皆伝〜
  • お問い合わせ
  • 家庭教師について
  • 金属と水溶液の計算問題(基礎知識編)


     前回までの2回では溶解度計算を一例として、化学の比例計算の一端をご紹介いたしました。今回からは「金属と水溶液の反応」に関する計算問題の解法を扱っていきます。第1回目の今回は、計算問題を扱う際の基礎知識を確認します。それでは、問題です。


    例題1 金属と水溶液の反応について、次の問いに答えなさい。


     (1) 金属がうすい水溶液と反応するときに生じる気体の名まえを答えなさい。


     (2) 次の@〜Eの文について、発生する気体の体積比(A:B)を最も簡単な

       整数比でそれぞれ求めなさい。ただし、答えが求められないときは×と

       答えなさい。なお、水溶液1cm3あたりの重さは1gとし、気体の体積は

       同じ温度と気圧(圧力)の下で測定するものとします。


      @ 十分な量の4%の塩酸に、(A) 0.6gと (B) 0.3gの鉄がそれぞれすべて

       とけたとき。

      A 十分な量の (A) 4%の塩酸と (B) 2%の塩酸に、0.4gの鉄がそれぞれ

       すべてとけたとき。

      B 十分な量の4%の塩酸に、(A) 0.3gの鉄と (B) 0.3gのアルミニウムが

       それぞれすべてとけたとき。

      C (A) 4%の塩酸20cm3と (B) 2%の塩酸30cm3に、十分な量の鉄が

       それぞれとけるだけとけたとき。

      D (A) 4%の水酸化ナトリウム水溶液50cm3と (B) 2%の塩酸80cm3に、

       0.2gのアルミニウムがそれぞれすべてとけたとき。

      E (A) 3%の水酸化ナトリウム水溶液50cm3と (B) 2%の塩酸60cm3に、

       十分な量のアルミニウムがそれぞれとけるだけとけたとき。


    ☆ 問題は、解説とともにPDFファイルでも別掲しますので、印刷してご覧いただけます。


     他のページでも触れているように、お子様はイメージできないことは考えられません。では、水溶液と金属の反応をどのようにイメージすればいいのでしょうか。そこで、私が授業でよく使う面白い説明をご紹介しましょう。例に用いるのは、「アルミニウムが塩酸にとける反応」です。ただし、話を面白くして強く印象に残すために、少し“どぎつい”と感じられるかもしれない表現が出てきますが、あしからずご了承ください。


     さて、物質はすべて極めて小さな“粒”からできており、この粒のことを化学の世界では「原子」と呼びます。そして化学とは、原子(粒)の「結びつきの変化」について考える学問です。これからご紹介する例え話には、“塩素さん”や“水素くん”や“アルミニウム君”というような、原子を擬人化したキャラクターが登場します。保護者の方は、かつて中学や高校で基礎化学を学んだときに、原子モデルというものを習ったはずです。実は、化学の理解にはモデルの理解が欠かせないのです。以下の例え話は、そのモデルの概念をお子様に強く印象づける大切なものだとご理解の上で、お子様に読ませてください。



    らぶらぶカップル

     塩酸は塩化水素という気体のとけた水溶液で、塩化水素は塩素と水素が結びついてできた物質です。そこで、塩化水素は、“塩素さん”という気の強い女の子と“水素くん”という少し気弱な男の子のカップルということにしましょう。

     さて、塩酸の中にはいくつもの塩化水素がとけています。“塩素さん”は“水素くん”が大好きなので、右上の図のように、ふだんは可愛らしく彼の手を握っていることにしておきましょう。今はとりあえず、塩酸とはそういう水溶液だと思っておいてください。


     ところがここで……事件です! 誰かが塩酸の中にアルミニウムを入れたのです。

    そのとたんに“塩素さん”が、向こうに見えるピカピカの“アルミニウム君”と彼女のそばで手をつないでいる“水素くん”を見比べたかと思うと、ものすごいことを言い放つのです。


      「ちょっとあなた! いったいいつまでその汚らしい手で私の手を握ってるのよ!」

      「さっさとその手を放しなさいよ!」


     『いやいや塩素さん、水素くんの手を握っていたのはあなたの方からですよ。』 などというツッコミに“塩素さん”が耳を貸す由もなく……。ちなみに、“青天の霹靂(へきれき)”というのは、まさしくこのような状況のことを言います。なんていう解説はさておき……。


     「え? でもぼくの手を……(先ににぎってきたのは“塩素さん”の方だと思い・・・・」


     気弱な“水素くん”が皆まで口にするよりもはるかに早く、“塩素さん”は“水素くん”の手をバッとふりほどくと、まっしぐらにピカピカの“アルミニウム君”を目がけて突進していきます。あっけにとられている“水素くん”は、まあ要するにフラれたわけですね。

    ※ 金属と水溶液が反応するときに生じる水素は、このようにして発生するのです。



     このように、塩酸の中ではあちこちで“水素くん”が“塩素さん”にフラれ続けているわけです。しかし、いつまでもゲラゲラ笑っている場合ではありませんよ。ここから、少しずつ真面目な理科の話に戻していきます。


    ここで、質問です! この、あまりにもひどい悲劇(喜劇とも言えますが……)はいったいいつまで続くのでしょうか?  (ちなみに、答えは2パターンあります。)


    悲劇のカップル













     答えは、次の2つです。

       @ ピカピカの“アルミニウム君”がいなくなるまで

      または

       A “アルミニウム君”に突進していく“塩素さん”がいなくなるまで

     どうです。わかりましたか?

     ここで、おさえておくべき非常に大切なことが1つあります。それは、化学反応では、

     反応する物質のうち、少なくともどちらか一方がなくなるまでは反応は止ま

     らないということです。今回の例で言えば、アルミニウムまたは塩化水素のいずれか

     一方がなくなるまで反応は進み続けるということなのです。これは非常に大事なルール

     なので必ず覚えておいてください。



     いかがでしたか。こんなふうに考えれば、分かりにくい化学反応がものすごくリアルに想像できるのです。化学を理解するには、このような具体的なイメージを持つことが非常に重要であり、モデルを理解することこそが化学を理解する一番の秘訣というわけです。

    お子様がここでご紹介したお話を読んで十分に笑えたなら、化学の世界を理解する力がちゃんと備わっているということですから、そのように励ましてあげてください。


     残念ながら、たいていの塾では化学反応をフツーにしか教えてくれません。塾の授業では、今回扱った反応は次のような素っ気ない化学式で表されるだけです。


        塩酸 + アルミニウム → 水素 +(塩化アルミニウム)


     面白くないですよね。この“味気なさ”が、化学を学ぶお子様が化学を好きになれない原因と言っても過言ではないでしょう。いくら「これは重要だ!」とか先生に言われても……という感じです。このページを読んで、化学反応のモデルが理解できたお子様は、今後はこの式を眺めるたびにクスクス笑い出すかもしれませんね。でも、そうなればしめたものです。そんなふうに楽しく学ぶことは、とても大事なことです。


     さて、どんどん真面目な理科の話に戻していきましょう。

    金属部品

     塩酸と反応するのはアルミニウムだけではなく、鉄も亜鉛もマグネシウムもすべて塩酸と反応して水素が発生します。つまり“塩素さん”は、あまりパッとしない“水素くん”よりもピカピカした金属が大好きなんだなって思いますよね? でも、それはちょっと違います。“塩素さん”にだってれっきとした選択の基準があります。その証拠に、塩酸の中に銅を入れてもまったく反応しません。銅だけではありません。金を入れても銀を入れても反応しません。なぜか“塩素さん”は金,銀,銅が近づいてきても、そのまま“水素くん”の手を握っている方がいいのです。

     ここで「え〜、何で?」なんて決して言ってはいけません。たとえ他人にはとうてい理解できなくても、皆それぞれ好き・きらいの基準があるんです。これを「個人の自由」というのです。〔「たで食う虫も好き好き」というのは、まさにこういうことです。〕


     実は、“塩素さん”が金,銀,銅よりも“水素くん”を選ぶには、正当な理由があります。保護者の方は、かつて「イオン化傾向」ということを学ばれたことでしょう。しかし、小学生のお子様にイオンを理解するのは相当難しいことなので、私はこんなふうにまとめます。

    「こういうのを“大人の事情”って言うんだな(笑)。まあ、まだ小学生の君たちがその理由を深く理解するのはちょっと難しいね。ただし、“塩素さん”の好き・きらいには何か理由があるという事実を覚えておくことは大切だ。その上で、今はそれぞれの具体的な知識をしっかり覚えることに専念しよう。そういう個々の知識が多ければ多いほど、これから先の勉強でより深くものごとを理解する助けになるんだよ。」という具合です。



     さて、たっぷりと笑い、納得もしてもらったところで、最後に例題の考え方のヒントを出しておきましょう。


    (1) これは、たった今説明したことを読めば、すぐにわかるはずです。さらに付け加える

     と、ピカピカの“アルミニウム君”をねらっているのは“塩素さん”だけではありません。

     水酸化ナトリウムに含まれている“別の子(粒)”も“アルミニウム君”とくっつきたがって

     います。“アルミニウム君”は、化学の世界では結構な人気者なのでしょうね。

     〔ちなみに、いつも必ずフラれる運命にあるのが“水素くん”です(^_^; 〕


    (2) それぞれの状況のイメージを思い浮かべてみます。

      @ 「塩酸が十分にある」というのは、塩化水素(“塩素さん”と“水素くん”のカップル)

        が無数にいるという意味です。いま、鉄1人を0.1gとすると、Aは鉄が6人,Bは鉄が

        3人それぞれ塩酸の中に入るということになります。つまり、この問題で考えさせて

        いるのは、“塩素さん”にフラれる“水素くん”は何人? ということなのです。

      A 今度は鉄は4人で一定です。彼らが“塩素さん”と“水素くん”のカップルが無数に

        いる塩酸の中に入るとき、何人の“水素くん”がフラれるのかを考えるのです。

      B @とAでは、同じ金属どうしでしたから、話を単純にするために鉄1人を0.1gとして

        考えてましたが、この設問では金属の種類がちがいます。鉄とアルミニウムの1人

        あたりの体重がちがいますから、どちらも0.1gを1人とするわけにはいきません。

        〔ちなみに、アルミニウムは軽金属と呼ばれる“体重の軽い金属”の代表例です。〕

      C さっきのお話の最後に「あの悲劇(喜劇?)が終わるのはどんなとき?」という問い

        を立てましたね。この設問では、鉄が無数にいるけど、塩酸の中にいる塩化水素

        のカップルの数が限られています。そこに注目すれば、答えはすぐにわかります。

      D ここでも、“アルミニウム君”よりも、彼をねらっている“塩素さん”や“別の子”の方

        がたくさんいますね。そこに注目して考えましょう。

      E 物質の種類によって1人あたりの体重がちがうのは、金属だけに限った話ではあり

        ません。“塩素さん”と“別の子”だって当然ちがいます。この設問では、「ちがう」と

        いうことだけが分かればいいのです。 〔そもそも、女の子に「どっちが重いの?」

        なんて失礼なことを尋ねられるわけがありませんしね(笑)。〕



    勉強する人

      ここでご紹介したのは、あくまでも理解を助けるための一例です。化学計算の問題を考えるときに、お子様がいつまでもこんなことだけを考えて問題を解くわけではありません。今回の例題の最も重要な目的は、化学計算の基本的な考え方を身に着けることなのですから、ヒントに書かれたたとえ話を理解することに労力を使い過ぎるのはナンセンスです。むしろ、さっさと解答・解説を読んで、そこに書かれている重要ポイントを理解することにしっかりと時間を使ってくださいね。


     たいていの塾では今回ご紹介した内容に関する説明はかなりあっさりしているようですが、化学計算の基礎・基本とは、現象の理解に他なりません。次回以降に私が取り上げる例題も、今回の内容を礎にして積み上げていくものですから、解説に書いた重要ポイントをしっかりと身に着けてください。

     では、次回からの金属と水溶液の計算問題の解法を、しばらくお待ちください。



  • 〔金属と水溶液の計算問題(基礎知識編)〕の問題・解答PDF


  •  

    理科の勉強方法


  • 中学入試の理科って難しい?
  • 合格点を取る基本戦略
  • 栓のない浴そうに水を溜める?
  • 小分けにせずに覚えよう
  • トイレのルールを変えてみる?
  • 皿回しの理論
  • どのくらい覚えるの?
  • 理科の成績が合否を分ける
  • Eテレがホントにすごい!?
  • 理科の勉強方法(一覧)
  •  

    理科の豆知識


  • 梅?桃?それとも桜?
  • ミクロの世界をのぞく!(花粉編)
  • ミクロの世界をのぞく!(昆虫編)
  • なんてスペシャル!
  • 空の青と海の青
  • 光電池の不思議なつなぎ方
  • かくし方が大切?な光電池
  • エルニーニョ現象のひみつ
  • 雲 〜その正体とでき方〜
  • 雲のでき方とエアコンの深い関係?
  • 月の満ち欠け
  • 理科の豆知識(一覧)
  •  

    計算問題 〜解法の奥義皆伝〜


    (理科計算問題 解法のテクニック)

  • 豆電球の回路の明るさ比べ
  • てこのつりあいの解法
  • 地震に関する計算問題
  • フェーン現象の計算問題
  • ばねとてこのつりあい
  • 月の動きに関する3つの計算
  • スラスラ解ける浮力計算の解法
  • 溶解度の計算問題(基本編)
  • 溶解度の計算問題(発展編)
  • 金属と水溶液の計算問題(基礎知識編)
  • 金属と水溶液の計算問題(基本編)
  • 金属と水溶液の計算問題(応用編)
  •  

    コンテンツ・ナビ


  • ホーム
  • 理科の勉強方法
  • 理科の豆知識
  • 計算問題 〜解法の奥義皆伝〜
  • 運営者
  • お問い合わせ
  •  

     

    inserted by FC2 system